犬が花火をこわがるのはなぜ? 当日の対策と、長期的な慣らし方

窓の外がやわらかく光る室内で、毛布に囲まれた居場所に落ち着いて伏せている犬
この記事のイメージとしてAIで生成した画像です。

花火が上がりはじめたとたん、震える。隠れる。部屋の中をうろうろする。

そんな愛犬を見ても、飼い主さんが何かをまちがえているわけではありません。そして、少しも珍しいことではありません。花火をこわがるのは、飼い主さんが直面する行動の悩みの中でもっとも多いもののひとつで、程度の差はあれ多くの犬に当てはまります。

日本では夏の花火大会が中心ですが、雷や工事の音、車のバックファイアなど、突然の大きな音はいつでも起こります。少しの準備と、落ち着いた力に頼らない対応があれば、こうした夜はずっとこわくないものにできます。

どうしてそんなにこわいの?

犬の目線で世界を見てみると、わかりやすくなります。花火は、犬の脳が「危険」と判断する条件を、ほとんど全部そろえてしまっているのです。

  • 突然で、予測できない。 前ぶれの合図もなければ、リズムもなく、次に備えることもできません。予測できない大きな音は、一定に続く音よりずっと強いストレスになります。
  • 本当に大きい。 犬は人よりずっと広い範囲の音を聞き取ります。人が「びっくりした」と感じる音は、犬にとっては圧倒されるほどの音です。
  • 逃げ場も説明もない。 なぜ空が爆発しているのか、犬には理解できません。走って逃げても止まりません。この「どうにもできない感じ」がパニックを大きくします。
  • 音だけではない。 光の点滅、火薬のにおい、大きな音のわずかな振動まで、感覚のすべてが一度に押し寄せます。

そもそも、突然の音に驚く反応は体に深く組みこまれています。それが命を守ってきたからです。だから、こわがるのは「大げさにしている」のではありません。正常な神経系が、本来の仕事をしているだけです。

こわがっているサインを見分ける

恐怖は、いつも隅で丸くなる姿として表れるとはかぎりません。多くの犬は、見逃しやすい静かなサインを出しています。早く気づけるほど、早く助けてあげられます。

気づきにくいサインはっきりした苦痛のサイン
鼻をなめる、あくびをする、耳が下がる体が震える
暑くないのにハアハアしている隠れる、逃げ出そうとする
うろうろ歩き回る、落ち着かないクンクン鳴く、吠える、遠吠えする
べったりくっついてくる、ついて回るよだれが出る、おやつも受けつけない
白目が見える(ホエールアイ)物を壊す、室内で粗相する

気づきにくいサインが出たら、それを合図に、恐怖が大きくなる前に落ち着いて寄りそってあげてください。

花火の前に:土台をつくる

やるべきことの大半は、最初の一発が上がるにあります。少しの準備が大きく効きます。

  • 安心できる巣穴をつくる。 布をかけたクレート、毛布を敷いた部屋の隅、もともとよく隠れる場所など、囲まれた居心地のいいスペースを用意します。使うかどうかは犬に選ばせてください。閉じこめるのは絶対にNGです。
  • 運動は早い時間に。 暗くなる前に、しっかり歩いてにおいをかがせておくと、エネルギーが発散されてリラックスしやすくなります。花火が始まりそうな時間より、かなり早めに。
  • ごはんとトイレも早めに。 こわがっている犬は食べませんし、音が始まったら外に出たがりません。
  • 外の世界をやわらげる。 窓とカーテンを閉めて、音をやわらげ、光をさえぎります。テレビや音楽、ホワイトノイズをつけて、破裂音をまぎらわせましょう。
  • 家の戸締まりを確認する。 花火の時期は、一年のうちで犬が行方不明になることがもっとも多いタイミングのひとつです。ドアと門をしっかり閉め、迷子札とマイクロチップの登録情報が最新かどうかも確認しておきましょう。
  • 落ち着かせるアイテムを準備する。 体を軽く包むウェア、フェロモン拡散器、長くもつかじりものなどが助けになる犬もいます。恐怖が強い犬なら、当日より前にかかりつけの獣医さんに抗不安薬の相談を。こうした薬は、その場で慌てるより計画的に使ったほうがずっとよく効きます。

花火のあいだ:どう助けるか

音が始まったら、あなたの役目は落ち着いた「錨(いかり)」でいることです。

  • 自分がリラックスする。 犬は人のしぐさをよく見ています。声は軽く、動きはゆったりと。
  • 隠れさせてあげる。 巣穴に飛びこみたい、ソファの裏に潜りこみたい。そうしたいならさせてください。隠れるのは健全な対処法で、やめさせるものではありません。
  • 求めてきたら、なぐさめる。 犬のほうから来たなら、落ち着いた声とやさしい接触で安心させてあげて、まったく問題ありません(これについては下で詳しく)。
  • 気をそらすものを差し出す。 詰め物の知育トイ、なめるマット、静かな遊びに乗ってくれる犬もいます。乗ってきたら大成功。こわすぎてそれどころでなければ、無理強いはしないでください。
  • 恐怖を絶対に罰しない。 こわがっている犬を叱れば、ただでさえ恐ろしい状況に「飼い主の不機嫌」まで足すことになり、恐怖は強まります。
  • 無理に外へ出さない。 トイレは花火が始まる前に済ませ、途切れた合間にどうしても出るなら必ずリードをつけて。

「なぐさめると、こわがりが強くなるのでは?」 これは、犬のしつけの世界でもっともしぶとい迷信のひとつです。なぐさめることで、恐怖という感情を強めることはできません。安心させることが「もっとこわがりなさい」と教えることにはならないのです。ごほうびで強まるのは行動であって、気持ちではありません。そばにいることで愛犬が安心するなら、そうしてあげることはやさしくて、役に立つことです。それだけの話です。

花火だけの問題ではないとき

犬によっては、花火は「大きな音全般が苦手」という、もっと広い過敏さの一部です。雷、工事、ゴミ収集車の音まで苦手になることもあります。

恐怖が強い、だんだんひどくなっている、日常生活にまで広がっている——そんなときは、専門家に頼る価値があります。

まずはかかりつけの獣医さんに、隠れた原因がないか診てもらい、ストレスの強いイベントに向けた薬の相談を。根の深い音恐怖症には、力に頼らない方法の認定を受けた行動の専門家が、その子に合った計画を立ててくれます。頼ることは失敗ではありません。本当におびえている犬にとっては、いちばんやさしくて早い道です。

長い目で:恐怖そのものをやわらげる

当日の工夫はその夜を乗りきるためのものですが、時間をかければ恐怖そのものを減らしていくこともできます。

効果が確かめられている力に頼らない方法が、系統的脱感作と拮抗条件づけです。始めるのにいちばんいいのは、花火のシーズンから離れた時期です。

  1. 花火の音の録音を、犬がほとんど気づかないくらい小さな音量で流します。
  2. その小さな音を、すてきなことと結びつけます。おやつ、遊び、静かなほめ言葉。
  3. 短い練習を何度も重ね、犬がリラックスしていられる範囲でだけ、少しずつ音量を上げます。

根気よく続けると、犬の脳に新しい結びつきが育ちます。「遠くのドンという音は、危険ではなく、いいことの前ぶれだ」。数日ではなく、数週間から数か月かかります。でもこれが、本当に長続きする解決にいちばん近い方法です。

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